墓じまいやお墓の移転を考えたとき、気になるのが「墓石をどう処分するか」です。
「費用を抑えるために自分で処分できないか」と考える方も少なくありません。
本記事では、墓石を自分で処分する際の方法や注意点、法的手続き、業者との違いまで詳しく解説します。
「処分すること」は単なる片付けではなく、ご先祖様への最後のご挨拶でもあります。後悔しないためにも、ぜひ最後までご覧ください。
墓石を自分で処分することは可能か?
法律上は不可能ではない
墓石を自分で撤去・処分すること自体は、法律で明確に禁止されているわけではありません。
ただし、墓地の管理規約や自治体のルール、廃棄物処理法に基づく制約があるため、事前確認が必要です。
「私有地にあるから自由にできる」と誤解している方も多いですが、石材は産業廃棄物に該当するため適切な処理義務が発生します。
墓地や霊園の管理規約に注意
多くの霊園や寺院では、勝手に墓石を動かすことは禁止されています。
管理者の許可を得ずに作業するとトラブルになる可能性もあるため、必ず事前に確認しましょう。
また、寺院墓地では僧侶による「閉眼供養(魂抜き)」が求められる場合があり、宗派ごとの慣習も事前に調べる必要があります。
墓石を自分で処分する方法
管理者へ解体の申請をする
まずは墓地の管理者に連絡し、墓石撤去の許可と手続きについて確認します。
書類や印鑑、身分証明書などが必要になる場合もあります。
事前に合意書や承諾書の提出を求められるケースもあり、書類不備によるトラブルを避けるためにも丁寧な対応が求められます。
ご遺骨の取り出し(改葬)を行う
墓石を撤去する前に、納骨されているご遺骨を取り出す必要があります。
これは「改葬許可証」が必要な正式な手続きで、市区町村役場に申請します。
【改葬の流れ】
- 改葬先の受け入れ証明を取得
- 現在の墓地の管理者に署名・押印を依頼
- 市区町村役場に「改葬許可申請書」を提出
宗教儀礼として、住職による閉眼供養や開眼供養を同時に行うことも一般的です。
墓石の解体・搬出
工具を用意し、墓石を分解してトラックなどに積み込みます。
ただし、墓石は数百キロ以上ある場合もあり、非常に危険を伴います。
人手や道具、搬出ルートの確保が必要不可欠です。
・一般的な墓石の重さ:
- 竿石:約80~200kg
- 台座全体:約300~500kg
知識・技術がなければ重機の手配が必要になることもあります。
処分場への運搬と廃棄
墓石は「産業廃棄物(コンクリートがれき)」として扱われることが多く、自治体の清掃センターでは回収してもらえません。
産業廃棄物処理業者や石材業者に引き取りを依頼する必要があります。
「処理できる石材の種類」や「料金体系」も異なるため、必ず事前に確認しましょう。
墓石を自分で処分する際の注意点
法的なリスク
廃棄方法を誤ると、廃棄物処理法違反に問われる可能性があります。
不法投棄は重大な犯罪として罰せられるため、必ず適切な方法で処理しましょう。
自分で山林や空き地に遺棄した場合、5年以下の懲役や1,000万円以下の罰金が科されることもあります。
搬出中の事故や怪我
墓石は重く、不安定な形状のため、ケガや落下事故が起こる危険性があります。
複数人での作業や、作業道具の安全確認が必須です。
実際、搬出中に足を挟まれて骨折した事例や、車に積載中に滑落して車体を損傷させた事故も報告されています。
近隣トラブルへの配慮
撤去作業の音や振動が大きくなることもあります。
近隣のお墓や住民に配慮し、事前に一言声をかけておくと安心です。
また、作業日や時間帯を予告しておくと、円滑な関係維持につながります。
自分で処分する場合と業者に依頼する場合の比較
項目 | 自分で処分 | 業者に依頼 |
---|---|---|
費用 | 安く抑えられる可能性あり | 5万円〜30万円程度 |
安全性 | 事故リスクが高い | プロのため安心 |
手続き | 自分で全て行う | 多くは代行可能 |
精神的負担 | 大きい可能性あり | 軽減される |
「少しでも安く」と考える方もいますが、安全面や法的リスクを考慮すると、プロに依頼する方が結果的に安心です。
業者によっては、閉眼供養の手配から廃棄証明書の発行まで対応してくれることもあります。
墓石の処分にかかる費用の目安
処分内容 | 費用相場 |
---|---|
墓石の撤去のみ | 5万円〜15万円 |
墓地の更地化 | 5万円〜10万円 |
ご遺骨の取り出し(改葬手続き代行) | 2万円〜5万円 |
墓石の運搬・廃棄費用 | 5万円〜20万円 |
費用は地域や業者によって異なるため、複数社から見積もりを取るのがベストです。
【ポイント】
- 墓石の大きさ・重さ
- 墓地の立地(山間・都市部)
- 搬出に必要な人員・重機
費用の幅があるのは、こうした条件の違いによります。
業者に依頼する場合の流れとポイント
墓じまいの相談
まずは石材店や葬儀社に相談し、墓じまいの流れや費用を確認します。
近年では「墓じまい専門業者」も増えており、対応がスムーズです。
無料相談を実施している業者も多いため、気軽に問い合わせてみましょう。
現地調査と見積もり
現地調査を通して、撤去の可否や手順が確認されます。
見積もりでは、作業日数・人件費・廃棄費などが記載されているか確認しましょう。
「見積もり後の追加費用は発生するか?」など、あらかじめ質問しておくことも大切です。
必要な手続きの代行
改葬許可の取得や、遺骨の取り出しも業者が代行可能な場合があります。
手続きに不安がある方は、代行サービス込みのプランを選ぶと安心です。
信頼できる業者であれば、行政とのやり取りや寺院との調整まで一括で任せられます。
まとめ
墓石の処分は、自分で行うことも可能ですが、法的手続きや安全性への配慮が不可欠です。
一方で、専門業者に依頼すれば安心して任せられます。
費用と手間、リスクをよく比較し、ご自身や家族にとって最適な方法を選びましょう。
悔いのない墓じまいのためにも、早めの準備と情報収集をおすすめします。